ICT Mateの導入で、データ集約時間を大幅に削減。
より効果的なフィードバックが可能となり
院内感染対策がベースアップした。
平塚市民病院は、第2種感染症指定医療機関、災害拠点病院、地域医療支援病院、などの指定を受け、地域の中核病院として高度な最先端医療を提供しています。また、政策的医療としての小児・周産期医療、災害医療、さらには新型コロナウイルス感染症のような感染症対策にも力を入れております。
今回は、感染制御支援システムICT Mateを2013年に導入いただき、およそ10年が経過する中、システムの活用状況ならびに今後のシステムへの期待について、看護師の石井様、検査技師の間地(あいち)様、薬剤師の小野寺様にお伺いしています。
システムの導入前は、サーベイランスを手書きのワークシートで行っていたため、サーベイランス以外でもデータ収集に時間がかかっていました。カルテの様々なところに散らばっているデータを収集する作業がとても大変でした。
例えば、検査科から耐性菌の報告がきて、該当の患者様の状況を確認しても、データの整理はできないという状態でした。
以前、私は集中治療室の勤務だったので、業務の合間や持ち帰りで感染対策の資料を作ることも多かったのですが、当時は感染管理システムを入れている施設はあまりなく、それが当たり前だと思っていました。
2012年に感染対策室の専従となった際に、感染管理のシステムがあると知り、問い合わせをしたのがICT Mateを知ったきっかけです。他にも3社ほど提案を頂きましたね。
当社に決めていただいたポイントは何でしょうか?
最終的にはプロポーサルを実施して決定したのですが、提案や対応についての評価は高かったと思います。
正直なところ、他社さんも機能についてはそこまで大きく変わりませんでした。
アイテック阪急阪神の営業担当さんは、「こうしましょう」とか「こういうことができます」とか、一番よく相談に乗ってくれていました。汗だくになりながら、何度も説明に来てくれましたし(笑)、そこは本当にダントツでした。
また、帳票などが定型だけではなく当院に合わせて、柔軟に対応いただけた点もポイントでした。
ありがとうございます!決定いただいた後、導入に際してご不安などはなかったでしょうか?
初めてのシステム導入だったので、心配なことが分からなかったというのが正直なところです。どちらかというと、「システムってこんなことができるんだ!」というワクワク感のほうが大きかったですね。
システム導入後、データ集約の作業効率はあがりましたか?
それは、すごいですよ。システム導入後の作業効率は大幅に上がりました。
導入前はサーベイランスでは消化器外科と心臓血管外科のSSIのみでしたが、今はUTI、CLABSI、全身麻酔手術すべてのSSIサーベイランスを実施しています。
システム導入時にサーベイを入力するのをどこまで現場に任せるかなどの運用を整えてしまえば、あとは自動でデータが集まってきます。もし、足りないところがあればそこをどうしたらいいかを考えていけばよいので、こちらのやる気次第でいくらでも深堀りができるようになったと思います。
残業時間の削減や空いた時間で他の業務ができるようになったなどの効果はありますか?
データ集約の時間が削減された分、データ活用に時間をかけられるようになりました。例えばAST活動では広域抗菌薬の投与前24時間の血培の実施率や抗菌薬使用量の確認など、アウトカムを広げていくことができました。データを調べるときにもICT Mateが使えます。24時間前に血培を実施した症例などがすぐに分かるので、どうやって介入ができるか、という次のステップを検討することができます。なので、余った時間ができたら他の仕事が入るんです(笑)でもどんどん介入の幅が広がっていてよいと思います。
また紙ベースのサーベイランスの時はフィードバックをほとんどできませんでしたが、サーベイランスのデータ収集に使っていた時間が縮小されたので、その分フィードバックを考える時間ができました。フィードバックはシステムから出したデータをそのまま使うというよりも、データの見せ方を考えたりする時間をとれるようになりました。
今後はフィードバックの部分についてはシステム内でもコミュニケーションができるようにできればいいなと思っています。
それはいいですね。フィードバックの資料についても「CLABSIでグラフを入れてほしい」とお願いしたら、システムからグラフがでるように対応していただき驚きました。アイテック阪急阪神の保守担当さんの対応はこういった柔軟性があるのがいいですね。「データをこういう形にしてみたい」とか、「エクセルでこういう項目を入れてみたい」と相談したときの対応がすごく早いです。もしできなくても、ここまではできるというところまで検討してくれます。
患者配置マップ機能はよく使っています。耐性菌陽性になった患者様は各部署のリンクナースが確認できるチェック機能がついています。ベッドマップが過去にさかのぼれるのが便利ですね。
それと、印刷のフォーマットでは「全患者」や「病棟ごと」などを選択して出力できる機能も役立っています。例えばコロナの対応で、ある病棟からコロナ陽性者が出たとして病棟患者全員の接触者一覧表を作る、という際にも活用できます。
コロナ禍になるまでは、その病棟の全員を検査しないといけないという事態になるなど思ってもみなかったですが、これは本当に役に立っています。
それから、手指消毒剤の使用量の管理機能も大活躍しています。
この機能は平塚市民病院様がきっかけで開発し、パッケージ化しました。
そうなんですね!ここに外来やオペ室の使用量も入れたいと相談して入れてもらいました。手指消毒薬使用量の計算に必要な延べ患者数は他の資料で発生数などのデータにも活用しています。
職員抗体・ワクチン接種管理機能はいかがでしょうか?
この機能も大活躍ですね。2013年に職員の4種の抗体価を調べました。このタイミングでICT Mateが導入されました。ICT Mateにデータを入れる際に職員IDの紐づけを工夫していただいたので、自動的にデータが反映できるようになりました。備考欄に各自のワクチン接種履歴も入力できて、そのデータはずっと引き継がれています。例えば一度退職した方が復職したり、正規から嘱託に変わってIDが変わったりした場合も簡単にデータが移行できるのでとても便利ですね。
また、ワクチン接種の必要性については、ICT Mateの管理者権限を持つ担当医師が、同じ情報を見ながら判断ができます。昨年はHBs抗体価が基準に満たない職員のフォローもしようと決まり、ICT Mateで抽出してワクチン接種につなげています。
検査室では、今まで細菌システムで出していた様々なデータをICT Mateから出せるようになったことが助かっています。特に耐性菌のデータがほぼ1ステップでだせる点が大きいと思います。以前はMRSAの抽出をして、ESBLを抽出して…と各々抽出して集計していましたが、統計・集計から定型帳票を選択すると、まとめて耐性菌が出てきてくれるので、大助かりです。
また、他にはラウンド支援が活躍しています。AST血液培養ラウンドでは入院時に外来の所属のものが、ラウンド実施時には入院している病棟病室が表示されるので助かっています。他にもこちらの細かい要望にも対応していただいていると思います。
薬剤師の業務では、抗菌薬適正使用支援機能が役に立っています。
ICT Mateが導入された当初は、自分が使うことはあまりなく、便利そうだなと見ていただけでした。抗菌薬適正使用がアクションプランにでてきた頃に、使うようになりました。それまで抗菌薬届出の伝票はありましたが、データを作成するには伝票に書かれている情報を整理していくしかありませんでした。
ICT Mateを使えば、薬剤の系統など様々な指標ですぐにデータが出てきます。報告資料の作成の際はデータの加工が必要ですが、元となるデータを出す手間が圧倒的に減りました。
コロナ禍の前は耐性菌の話でもちきりでしたし、抗菌薬を使用している患者様のリストが瞬時で出るのは驚きました。その後、抗菌薬の流通が不安定になったときにも、今使用している患者さんや処方した医師の情報もすぐにでてくるのが、本当に便利です。
正直、こういったことにシステムを使うとは思っていませんでしたが、深堀りが出来るようになったと思います。
攻めどころが分かりますよね(笑)
そうそう。抗菌薬を処方している医師の上位は誰かなど、そんなことを追究することになるとは思ってもみなかったですね。
抗菌薬ラウンドをやり始めたときには、もうICT Mateがあったのかな?
そうですね。その前まではラウンドとしてではなくて、伝票を見て人数などを把握していたと思います。
以前は、対象患者さんが入院中であるかどうかをひとりひとりの電子カルテで確認していましたが、ICT Mateですぐに把握できるようになったので楽になりました。
今もサーベイランスには力を入れていますが、今後も継続していきたいです。感染は数字で表れるので、正しい数値を出すことで受け入れ方が変わります。
また、地域連携にも力を入れたいです。今年度より、新たに地域のクリニックと連携して分かったことがたくさんあります。クリニックに抗菌薬、耐性菌、手指衛生のフォーマットに記入してもらい、それを整理してフィードバックを返しています。「消毒薬の使用量は外来患者数で割ると、このくらいの量が適正だよ」というようなフィードバックなら分かりやすく、受け入れられやすいですよね。分かりやすいフィードバックを行うことで地域の感染対策の底上げをしていきたいです。
地域連携におけるデータの整理からフィードバック資料までICT Mateで作成できるようになるといいですね。
貴重なお話を頂きましてありがとうございました
取材日:2022年11月
ご協力:
・感染担当医師:片山 順平 様
・感染対策室長:石井 美千代 様
・感染制御認定薬剤師:小野寺 潤 様
・臨床検査技師:間地 知子 様