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コラム

2026.09.09

感染管理認定看護師が伝える現場実践コラム ~いま押さえるべき肺炎球菌ワクチンの最新情報と接種指導のポイント~

感染管理認定看護師(2010年取得) 感染管理コンサルタント

impサポートセンター代表 伊藤 幸咲 氏

1999年に看護師として総合病院に勤務。外科・脳外科などの病棟経験したのち手術室へ異動。2010年には感染管理認定看護師を取得。 2019年にimpサポートセンターを設立。 「気軽に相談できる感染対策の専門家」をコンセプトに、現在は医療機関や福祉施設へ感染管理コンサルタントとしてご活躍中。
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高齢者の肺炎予防に欠かせない肺炎球菌ワクチンは、近年その種類や接種方法が進化しています。感染管理の医療職にとって、ワクチンの特徴や適切な接種戦略を理解し、患者さんへの指導やケアに活かすことは重要です。今回は感染管理認定看護師として長年医療現場での感染対策に携わり、ワクチン接種の指導や感染予防教育に豊富な経験を持つimpサポートセンター代表の伊藤様に、最新の肺炎球菌ワクチンの概要や高齢者への効果、現場で押さえておきたいポイントをわかりやすく解説していただきます。

はじめに

2025年7月16日のコラムで肺炎球菌ワクチンの最新動向が掲載されましたが、「ワクチンの種類が増えてわかりにくい」「患者さんに聞かれても答えられない」「どれを勧めればよいかわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。私たち医療職は常に知識をアップデートし、ワクチンの必要性を説明できることで信頼を高めることが求められます。

今回は肺炎球菌の歴史と今後のワクチン接種について、感染管理認定看護師の視点からお伝えします。 感染管理認定看護師は患者さんに最も身近な感染対策の専門家です。impサポートセンターでは最新のガイドラインや知見に基づき、医療機関や介護施設の感染対策の疑問・課題に応える伴走型サポートを行っています。複雑化するワクチンのバージョンアップや患者さん・利用者さんへの効果的なアプローチ方法も含め、現場で役立つ具体的なノウハウをお伝えします。

これまでの高齢者の肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌は、その名の通り肺炎を引き起こす原因菌ですが、肺炎以外にも髄膜炎や気管支炎などの原因となります。小児や高齢者は免疫力が低いため、この肺炎球菌による感染症にかかりやすく、ワクチン接種によって予防することが推奨されています。

高齢になると免疫力が低下し感染症にかかりやすくなり、肺の機能も低下するため重症化しやすく、入院リスクが高まります。インフルエンザとの重複感染もよく知られています。高齢者の肺炎の原因の30~40%は肺炎球菌といわれており、肺炎を契機にADLが低下し介護が必要になるきっかけにもなります。そのため2014年から高齢者への肺炎球菌ワクチン接種が開始されました。ニューモバックスという肺炎球菌ワクチンは、5年おきの接種で抗体が持続します。1度だけ公費負担で接種できますが、2回目以降は自己負担となります。 この度、高齢者の肺炎球菌ワクチンがバージョンアップされることになりました。

高齢者の肺炎球菌ワクチン接種

医療職は患者さんにワクチンの有効性や接種スケジュールを伝える必要があります。以下を参考にしてください。

<過去にニューモバックスを接種している方>

ニューモバックス接種より1年以上の間隔をあけて
  • ●自己負担でプレベナーを接種
  • ●自己負担でキャップバックスを接種 ※どちらも数年後の追加接種は不要

<初めて肺炎球菌ワクチンを受ける方>

  • ●公費負担でプレベナーを接種
  • ●自己負担でキャップバックスを接種 ※どちらも数年後の追加接種は不要
  • ●公費負担でニューモバックスを接種したのち、一定期間をおいてプレベナー・キャップバックスを接種

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図1:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版)引用

※2025年7月16日のコラム内で示されている図から更新されています。

これが今後の高齢者の肺炎球菌ワクチン接種の考え方です。これまで5年ごとに接種していましたが、プレベナーやキャップバックス接種後は追加接種が不要となり、1回接種だけの費用負担になります。自己負担でニューモバックスを1回接種するよりは費用が高くなりますが、5年ごとの接種が不要となるため、10年後を考えると費用はお得です。今後はプレベナーやキャップバックスが主流となるでしょう。

キャップバックスは現在まだ公費負担の対象ではなく、キャップバックス・プレベナー20・ニューモバックスはカバーする血清型の範囲に違いがあります。そのため、それぞれのワクチン接種を組み合わせることでより高い効果が期待できます。

小児では肺炎球菌ワクチンの定期接種が開始され、流行する肺炎球菌の「血清型」(※肺炎球菌の種類のこと)が減少したことから、高齢者に感染するリスクも下がり、高齢者の肺炎球菌ワクチンのバージョンアップが可能となりました。ワクチンのカバー範囲を考えると、自己負担でキャップバックスを接種することを個人的におすすめします。


図2.png

図2:呼吸器・内科のお悩み解決サイトより引用

ワクチン接種率

小児の肺炎球菌による肺炎や髄膜炎は重症化することも多かったため、2010年より任意接種が始まり、2013年から定期接種化されました。ワクチンはバージョンアップが速く、ここ数年で4回も更新されています。

肺炎球菌は90種類以上の血清型があり、バージョンアップごとにカバーする血清型の範囲が広がっています。この定期接種化により、5歳未満の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発生率は接種前と比べて約半減したと報告されています。

小児の肺炎球菌ワクチン接種率は、2022年度「定期の予防接種実施者数」(厚生労働省)によると、4回接種を完了した子どもの割合は94.5%と高い水準です。一方で高齢者の接種率は40%未満にとどまっています。高齢者の肺炎球菌ワクチンはB類に分類され、「努力義務なし」のため、医療現場での勧奨が徹底されにくかったことも低接種率の一因と考えられます。行政による公費負担や案内状の送付にもかかわらず接種率は低いままです。

医療現場では接種希望者も多く、これほど低い接種率は意外に感じられます。ただ、公費負担といっても「初回1回」のみであり、その後の5年おきの接種は自己負担で費用は7,000~10,000円程度、キャップバックスは現時点で自己負担のみで、費用の相場は15,000~20,000円程度のため、高齢者には負担となる可能性があります。

接種率が低い原因のひとつに、多くの高齢者が「まだまだ元気」と感じている点があるのではないでしょうか。もちろん、元気な高齢者が増え、現役で働く方も多くなりました。しかし身体機能は徐々に衰え始め、免疫機能も低下していきます。今後も元気に過ごすために、お金に余裕のある65歳で肺炎球菌ワクチンを接種し、ワクチンの力も借りて健康を維持していただきたいと思います。高齢者の肺炎球菌ワクチン接種率が向上すれば、肺炎リスクの低減、介護が必要となる期間の延長、健康寿命の延伸につながります。

医療機関としては、受診機会の少ない方にワクチン接種をきっかけに受診を促し、健康診断や他疾患の早期発見・フォローにつなげることが可能です。単なる予防接種にとどまらず、「集患・増患」や「地域の健康拠点としての役割強化」という経営戦略の視点からも感染予防を組み込むことが大切です。

まとめ

肺炎は日本人の死因第5位であり、肺炎による死亡者の97%以上が65歳以上の高齢者です。肺炎の30~40%が肺炎球菌によるもので、重症化しやすいことがわかっています。高齢者だけでなく、心疾患や糖尿病など基礎疾患を持つ方も特に注意が必要です。重症化を防ぐためにもワクチン接種をお勧めします。

高齢者の肺炎を防ぐカギはワクチン接種です。肺炎球菌ワクチンのバージョンアップにより、高齢者の肺炎減少が期待されます。私たち医療職も対象者に積極的にワクチン接種を勧め、肺炎や感染症に苦しむ人、その家族を少しでも減らせるよう予防医療に努めましょう。

impサポートセンターには感染管理認定看護師をはじめ、医療経営士、ストレスチェック実施者など、医療・経営・健康の多角的な視点を持つプロフェッショナルが揃っています。感染対策・予防医療の推進や研修会など、ぜひimpサポートセンターにお任せください。

impサポートセンター:ホームページ:https://www.imp-sc.com/

参考文献

  • 呼吸器・内科のお悩み解決サイト https://www.kasai-yokoyama.com/media/%E5%86%85%E7%A7%91/2874/
  • 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版) https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/65yrs_vaccine_ver7_20251027.pdf ・Pfizer:ワクチンを学ぶ https://www.pfizervaccines.jp/about/vpd/pd-in-children
  • 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 全国市町村における高齢者肺炎球菌ワクチン定期予防接種の実態調査 https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol47/555/555d04.html
  • 一般社団法人 日本呼吸器学会 ストップ肺炎 https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/stop_pneumonia2024.pdf
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