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コラム

2025.3.26

感染症内科ドクターの視点シリーズ⑨
2025年4月より公費接種化
帯状疱疹ワクチンへの理解を深めよう

岡山大学病院 感染症内科 准教授

萩谷英大(はぎやひではる)先生

茨城県つくば市生まれ。岡山大学医学部卒業後、救急・集中治療領域での研鑽を経て、大阪大学医学部附属病院の感染制御部で感染制御・感染症診療を修得。総合内科専門医、日本感染症学会専門医/指導医、Certificate in Travel Health (CTH)、Certificate in Infection Control (CIC)など感染症関連の認定を取得。薬剤耐性菌が大好き(?)で、ヤバイ耐性菌が検出されたと聞くと逆にワクワクしてしまう性格を何とかしなければならないと感じている。

萩谷英大先生は感染症の診断・治療と制御・対策、薬剤耐性、感染症の流行調査など、幅広い専門分野に精通されています。実際の現場で感染症診療や感染制御に従事すると同時に、研究活動にも注力されています。今回は、2025年4月から、帯状疱疹ワクチンの公費接種化が決定したことを受け、帯状疱疹の基礎知識やワクチンの必要性、さらには公費接種化の背景とその意義について解説していただきます。

2025年4月より帯状疱疹ワクチンが定期接種化されることが決まりました。国からの通知がかなり直前だったため、各自治体ではその具体的な内容の調整・決定・通知のために四苦八苦していることと思います(2025年3月時点)。今回はそんな帯状疱疹ワクチンについて深堀りし、その必要性や注意点についてご紹介したいと思います。

帯状疱疹は、ヘルペス属ウイルスに分類される水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster virus; VZV)によって引き起こされます。ヘルペスウイルスはいろんな場面で聞くので皆さんもよくご存じかと思いますが、全部で8つのウイルスに分けられています(表1)。臨床的にヘルペスウイルスの難しいところは、初感染の症状と再発病態が異なることが多いことにあります。中には腫瘍発生に関連するヘルペスウイルスもあり、ヒトに病気を起こすウイルスとして代表的な微生物と認識されています。

表1.ヘルペスウイルスの分類
分類 ウイルス名 通称 初感染 再発
HHV-1 単純ヘルペスウイルス1型 HSV-1 口唇ヘルペス・咽頭炎 口唇ヘルペス・歯肉炎・角膜炎
顔面神経麻痺・脳炎
HHV-2 単純ヘルペスウイルス2型 HSV-2 性器ヘルペス 再発性性器ヘルペス
HHV-3 水痘・帯状疱疹ウイルス VZV 水痘 帯状疱疹
HHV-4 EBウイルス EBV 伝染性単核球症 (癌化:バーキットリンパ腫)
HHV-5 サイトメガロウイルス CMV 伝染性単核球症 網膜炎・肺炎・腸炎 etc
HHV-6 ヒトヘルペスウイルス6型 HHV-6 突発性発疹 辺縁系脳炎
HHV-7 ヒトヘルペスウイルス7型 HHV-7 突発性発疹
HHV-8 カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス KSHV 伝染性単核球症 (癌化:カポジ肉腫)

帯状疱疹とは

VZVは小児期に自然感染し、水疱瘡を引き起こします。その後、体内の神経節に潜伏感染をし続け、加齢や免疫抑制状態になると帯状疱疹を発症するという2峰性の発症パターンをとるのが典型例です。帯状疱疹の患者さんの約2/3は50歳以上であり、70歳代をピークとして、80歳までに3人に1人が発症する疾患としてよく知られていると思います[1,2]。とくに悪性腫瘍や糖尿病、自己免疫性疾患などの基礎疾患があると発症率は高く、注意が必要です[3]

帯状疱疹は神経がある所には発症しうるため、全身のいたるところでみられるユビキタスな疾患です。とはいえ好発部位はある程度決まっていて、頭頚部15%、頸部~上肢15%、上肢~胸背部30%、腰背部20%、腰背部~下肢15%といった分布で発症することが知られています[4]。筆者が経験したことのある稀な帯状疱疹として口腔内(左図)[5]や喉頭(右図)[6]があり、本当に“何でもあり”な疾患だと感じています。

左図:硬口蓋の帯状疱疹、右図:喉頭・喉頭蓋・声帯の帯状疱疹

帯状疱疹が引き起こす“全身の後遺症”

帯状疱疹の症状は“一時的な神経痛”と考えられているかもしれませんが、長期的な合併症を残してしまうことがあります。帯状疱疹後神経痛(Post-Herpetic Neuralgia, PHN)は、「焼けるような」、「ズキンズキンする」、「電気が走るような」感覚障害であり、日常生活の質をひどく低下させ、うつ病のリスクにさえなり得るということが知られています[7]。その他にも脳炎、角膜炎、髄膜炎、ベル麻痺、ラムゼー・ハント症候群(顔面神経麻痺)、難聴、脊髄炎などを起こし、一生涯の後遺症となってしまう可能性もあります[8]

また、あまり知られていないかもしれませんが、VZVの再活性化により慢性的な炎症や血管障害が惹起され、様々な全身への影響があるという報告が蓄積されてきました。COPD(肺気腫)を持っている患者さんは、帯状疱疹を発症することでCOPD関連症状(18.7%)、呼吸困難(25.5%)、COPD増悪(11.9%)が増加したと報告されています[9]。帯状疱疹を発症すると、その後30日以内の脳卒中や心筋梗塞の発症オッズ比はそれぞれ1.93、1.35に上昇することもわかっています[10]。また、帯状疱疹に罹患することで血糖コントロールが悪化し、糖尿病管理に関連する入院回数、薬物療法の処方箋数が有意に増加することも知られています[11]。さらに、慢性腎臓病の悪化にも関与します[12]。このように、様々な合併症リスクを増加させる帯状疱疹は、単に痛みを伴うブツブツができる疾患ではない、という認識を持つことが重要です。

ワクチンの公費接種化

このように帯状疱疹は潜伏感染していたウイルスが内因性に再活性化することで発症します。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症のように飛沫・接触感染でヒト・ヒト感染するものではないため、ワクチン接種による公衆衛生対策という側面が弱い疾患と考えられます。しかし、①疾患の罹患率が高い、②長期的な後遺症状、③増加する高齢者で特に問題となる、④有効な予防ワクチンがある、といった様々な理由から帯状疱疹の予防ワクチンが各国で公費接種化されてきました。2023年時点でG7加盟国の中で日本のみが公費助成制度が敷かれていませんでしたが、2025年4月からスタートされる公費助成化でようやくこのワクチンギャップも改善が期待されます。

組み換えサブユニットワクチン~シングリックス®~

帯状疱疹の予防ワクチンには、従来の弱毒生ワクチンと、近年開発・認可された組み換えサブユニットワクチンであるシングリックス®があります(表)。弱毒生ワクチンは日本でも小児の定期接種で使用されるワクチンでなじみがありますが、高齢者への接種では有効性が期待できません。65歳以上の集団に弱毒生ワクチンを接種すると、ワクチン接種による予防効果は接種後1年で約40%、7年後には約20%にまで低下することが報告されています[13]。接種費用は比較的安価で済みますが、そもそもの予防効果があまり期待できないのでは意味がないですね。一方で、シングリックス®は2回接種、接種費用が高額(総額4-5万円ほど)であるというデメリットはありますが、予防効果が非常に高いというメリットがあります。

表. 弱毒生ワクチンとシングリックス®の比較
ワクチン名 弱毒生ワクチン シングリックス®
ワクチンの種類 生ワクチン 不活化ワクチン
接種回数/方法 1回/皮下注射 2回/筋肉注射(2か月間隔)
発症予防効果 65歳以上:
接種後1年で約40%
7年で約20%まで低下[13]
10年経過しても約70%以上[14]
副反応 水痘様発疹 局所疼痛・筋肉痛・発熱
禁忌 妊婦・免疫抑制者 アナフィラキシーのある人
費用 7000-8000円 約2万円~2.5万円×2回(4-5万円)
対象者 1歳以上 50歳以上→リスクのある18歳以上

シングリックス®の帯状疱疹発症予防効果(有効性)を検証し、安全性を検討するために実施されたZOSTER-006試験(50歳以上の男女 15,411例を対象)[15]とZOSTER-022試験(70歳以上の男女 13,900例を対象)[16]をご紹介します。いずれの試験でもシングリックス®またはプラセボを、約60日(2ヵ月)の間隔をあけて2回筋肉内注射をして4年間の追跡調査がされました。その結果、シングリックス®による帯状疱疹予防効果は前者では97.2%、後者でも89.8%と非常に高いワクチン接種効果が証明されました。帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症リスクの減少率も前者では100%、後者では85.5%と報告されています。2つの試験を統合すると、70歳以上の高齢者に対するシングリックス®の帯状疱疹予防効果は91.3%とまとめられます。長期的にも10年間の追跡調査にて89.0%の予防効果があることが証明されました[14]。特殊な集団として、自家造血幹細胞移植を受けた患者、造血器腫瘍患者、腎移植を受けた患者、固形悪性腫瘍の化学療法を受けた患者などでも同様に一定の予防効果が認められています。

このように弱毒生ワクチンを凌駕するシングリックス®の有効性が示されてきました。その結果、成人に対する帯状疱疹予防としては、一部の国(カナダ・チェコ・アイルランド)では弱毒生ワクチンも同程度に推奨されているようですが、多くの国ではシングリックス®が強く推奨されています[17]。一方でコスト・ベネフィットの試算に基づいて全高齢者ではなくハイリスク患者のみに推奨する国(イタリア・スペイン・イギリス)もあるようで、日本でどのような患者をターゲットに公費接種制度を設計していくべきかは議論の余地がまだまだあると感じています。

日本でワクチン接種をすすめるために

日本人はワクチン接種に対する忌避感が強いということはよく知られた事実です。最近Lancetに掲載された論文でも、日本ではワクチンの安全性・重要性・有効性に関する信頼性が他国に比べて軒並み低いことが指摘されています[18]。様々な対策アプローチはあると思いますが、まずはワクチン接種が当たり前という雰囲気作りが非常に重要なのではないでしょうか。米国ACIP(予防接種実施諮問委員会)は成人が接種するべきワクチンを公開しています。この中で帯状疱疹ワクチン(シングリックス®)もしっかりと推奨ワクチンとして記載されています。このような事実とともにワクチン接種の有効性を伝え、さらに公費接種化による経済的メリットが理解されれば、おのずとワクチン接種率は上昇していくのではないでしょうか。問題は、2025年3月時点で、4月からの公費助成の内容がまだ公表されていない自治体が多いということです。いつから、どのぐらいの公費補助があり、手続きはどうすればいいのか…早めに決定・公表をしないと病院も接種準備ができません。せっかくのワクチン接種の機会を逃さないために、行政・病院などが協力して準備・推奨していくことが求められていると思います。

表. おとなの予防ワクチン
19-26歳 27-49歳 50-64歳 65歳以上
COVID-19 最新のワクチンを年1回 最新ワクチンを年2回以上
インフルエンザ 流行期前に年1回
RSウイルス 妊娠32-36週に1回(アブリズボ) 60歳以上で1回(アブリズボ/アレックスビー)
肺炎球菌 基礎疾患や免疫抑制者* 全員*
帯状疱疹 (VZV) 免疫抑制者:シングリックス®2回 50歳以上:シングリックス®2回
子宮頸がん (HPV) 15歳未満:2回
15-26歳:3回
Case by case

https://www.cdc.gov/vaccines/hcp/imz-schedules/adult-age.html#table-ageより作図

【文献】

[1]Takao Y, Miyazaki Y, Okeda M, Onishi F, Yano S, Gomi Y, et al. Incidences of herpes zoster and postherpetic neuralgia in Japanese adults aged 50 years and older from a community-based prospective cohort study: The SHEZ study. J Epidemiol. 2015;25:617–25.

[2]Toyama N, Shiraki K, Society of the Miyazaki Prefecture Dermatologists. Epidemiology of herpes zoster and its relationship to varicella in Japan: A 10-year survey of 48,388 herpes zoster cases in Miyazaki prefecture. J Med Virol. 2009;81:2053–8.

[3]Hata A, Kuniyoshi M, Ohkusa Y. Risk of Herpes zoster in patients with underlying diseases: a retrospective hospital-based cohort study. Infection. 2011;39:537–44.

[4]石川 博康, 玉井 克人, 見坊 公子, 他. 多施設合同による帯状疱疹の年間統計解析の試み. 日皮会誌. 2003;113:1229–39.

[5]Hagiya H, Nakagami F, Isomura E. Oral shingles. BMJ Case Rep. 2018;11:e228383.

[6]Hagiya H, Yoshida H, Shimizu M, Motooka D, Nakamura S, Iida T, et al. Herpes zoster laryngitis in a patient treated with fingolimod. J Infect Chemother. 2016;22:830–2.

[7]Serpell M, Gater A, Carroll S, Abetz-Webb L, Mannan A, Johnson R. Burden of post-herpetic neuralgia in a sample of UK residents aged 50 years or older: findings from the Zoster Quality of Life (ZQOL) study. Health Qual Life Outcomes. 2014;12:92.

[8]Cohen JI. Clinical practice: Herpes zoster. N Engl J Med. 2013;369:255–63.

[9]Yawn BP, Merrill DD, Martinez S, Callen E, Cotton J, Williams D, et al. Knowledge and attitudes concerning herpes zoster among people with COPD: An interventional survey study. Vaccines (Basel). 2022;10:420.

[10]Parameswaran GI, Wattengel BA, Chua HC, Swiderek J, Fuchs T, Carter MT, et al. Increased stroke risk following herpes zoster infection and protection with zoster vaccine. Clin Infect Dis. 2023;76:e1335–40.

[11]Muñoz-Quiles C, López-Lacort M, Ampudia-Blasco FJ, Díez-Domingo J. Risk and impact of herpes zoster on patients with diabetes: A population-based study, 2009-2014. Hum Vaccin Immunother. 2017;13:2606–11.

[12]Lin S-Y, Liu J-H, Yeh H-C, Lin C-L, Tsai I-J, Chen P-C, et al. Association between herpes zoster and end stage renal disease entrance in chronic kidney disease patients: a population-based cohort study. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2014;33:1809–15.

[13]Izurieta HS, Wernecke M, Kelman J, Wong S, Forshee R, Pratt D, et al. Effectiveness and duration of protection provided by the live-attenuated herpes zoster vaccine in the Medicare population ages 65 years and older. Clin Infect Dis. 2017;64:785–93.

[14]Strezova A, Diez-Domingo J, Al Shawafi K, Tinoco JC, Shi M, Pirrotta P, et al. Long-term protection against herpes zoster by the adjuvanted recombinant zoster vaccine: Interim efficacy, immunogenicity, and safety results up to 10 years after initial vaccination. Open Forum Infect Dis. 2022;9:ofac485.

[15]Lal H, Cunningham AL, Godeaux O, Chlibek R, Diez-Domingo J, Hwang S-J, et al. Efficacy of an adjuvanted herpes zoster subunit vaccine in older adults. N Engl J Med. 2015;372:2087–96.

[16]Cunningham AL, Lal H, Kovac M, Chlibek R, Hwang S-J, Díez-Domingo J, et al. Efficacy of the herpes zoster subunit vaccine in adults 70 years of age or older. N Engl J Med. 2016;375:1019–32.

[17]Parikh R, Widenmaier R, Lecrenier N. A practitioner’s guide to the recombinant zoster vaccine: review of national vaccination recommendations. Expert Rev Vaccines. 2021;20:1065–75.

[18]de Figueiredo A, Simas C, Karafillakis E, Paterson P, Larson HJ. Mapping global trends in vaccine confidence and investigating barriers to vaccine uptake: a large-scale retrospective temporal modelling study. Lancet. 2020;396:898–908.

  

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