医療従事者向けお役立ち情報
コラム
2023.2.28
2019年11月に発生し、2020年より日本でも拡大したCovid19感染症は3年を経てようやく正常化が見えてきました。そこで今回は、感染制御を専門とする日本赤十字豊田看護大学の下間正隆教授にCovid19以前から重要な課題となっていた薬剤耐性菌対策について、イラストを使って分かりやすく解説していただいております。
特別に一部を公開しております。本ページ下部より全編をダウンロードいただけます。
細菌の基礎知識
耐性菌の代表格「MRSA」
悪夢の耐性菌「CRE」
感染対策の三本柱
耐性菌患者の把握
細菌は目では見えません。一見きれいに見える病室でも、顕微鏡で見てみるとたくさんの細菌が潜んでいます。
細菌はグラム染色をすると4つに分類され、主に「GPC」と「GNR」があります。
GPCは乾燥に強く、GNRはじめじめした場所を好みます。
薬剤耐性菌とは、抗菌薬が効かない細菌のことを言います。治りにくいだけではなく、発熱しない限り発見が出来ず治療が遅れるという難点があります。
薬剤耐性菌で代表的なものは1980年代後半から日本で問題となったMRSAです。これは黄色ブドウ球菌がメチシリンに対して耐性化したものです。
黄色ブドウ球菌は食中毒の原因になったり、とびひ、毛嚢炎などを起こしたりします。黄色ブドウ球菌に対してメチシリンを使いすぎたことで、メチシリン耐性を持つようになりました。MRSAになっても病原性は変わりませんが、効く薬が少ないため治療が困難になります。
今も全ての耐性菌の新規感染者の94%はMRSA感染です。
MRSAは症状が強く、脳腫瘍や心内膜炎など重篤な症状を引き起こすことがあります。また、MRSA骨髄炎になった場合、4~6週間以上も抗MRSA薬を点滴する必要があるなど、治療には長い時間がかかります。またその薬剤は種類が少ないうえに非常に高価であることも負担を大きくします。MRSA感染を予防するには手指衛生が最も大切です。
院内感染を防ぐには、耐性菌患者を把握する必要があります。感染管理システムは自動でデータを収集し、視覚的に確認することができるので、院内感染の疑いにいち早く気が付き、介入することが可能です。感染管理システムは日々の感染対策を縁の下から支える力持ちと言えるでしょう。